アメリカのアイデンティティについて考察した本

 前回はアメリカの移民に関する話題を取り上げましたが、それにも関連した、私が読んだ洋書の中で興味深かった1冊を今回は紹介したいと思います。

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お勧めの洋書「Who Are We?: The Challenges to America’s National Identity」

政治学者でハーバード大学教授であったサミュエル・ハンティントン氏(2008年に死去)の著作 ”Who Are We?: The Challenges to America’s National Identity”(Simon & Schuster) です。「分断されるアメリカ」(鈴木主税訳、集英社)というタイトルで邦訳本も出版されていますが、英語を勉強している人には原書がおすすめです。

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原書版

和訳版

 原書のタイトルを日本語訳すれば、「我々は何者か?―アメリカの国家アイデンティティへの挑戦」といった感じでしょうか。このタイトルの通り、著者は、アメリカのアイデンティティとは何か、歴史を紐解きながら論じたうえで、現代のアメリカが抱えている国家としてのアイデンティティの脅威、試練について論じています。

 著者は、アメリカのアイデンティティの根幹にあるのは、入植時代にイギリスからもたらされたアングロ・プロテスタントの精神であるとします。つまり、英語を話し、宗教的にはプロテスタントの人々です。こうしたいわゆるWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)のアイデンティティが、これまで続いてきたアメリカのアイデンティティであると著者は主張します。

 そのうえで著者は、近年のヒスパニック系移民の大量流入により、このアイデンティティが脅威にさらされていると主張します。彼らはこうしたアメリカのアイデンティティを尊重せず、例えば言語に関しても、彼らは英語を身につける割合が他の移民と比べても低く、彼らの母語であるスペイン語を使い続けているとしています。確かに、アメリカでのスペイン語の話者は英語に次ぐ規模を誇っており、これは明らかにヒスパニック系移民の増加に伴うものです。こうした危機感を強く抱くアメリカ国民も多く、例えば言語に関しては、現在31の州が公用語を英語と規定しています(アメリカには実は法で規定された連邦レベルでの公用語はありません。英語が「事実上の」公用語となっています)。多くの人種、文化的背景を持った人々が集まっているアメリカにおいて、一つの国家として統治することは容易なことではなく、現在も多くの移民が流入する中で、こうした国家としてのアイデンティティを問う著作が出版されたのも当然といえます。この本は2004年に出版されたものですが、今読んでも古さは感じられません。

 私が読んでみた感覚では、この本の英語の難易度はTOEICでいえば700点くらいあれば、ほぼ支障なく読み進めていけるのではないかと思います。英検でいえば準1級くらいの英語力があれば問題なく読めると思います。英検2級やセンター試験の英語のレベルよりは上回ると感じます。なので、英語を勉強している社会人や大学生でアメリカについて関心のある人や、難関といわれる大学で英語やアメリカについて学びたいと考えている高校生にもおすすめできる本です。

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